今回は,そういう対立株主ではなく,「株主が行方不明になって連絡が付かない」という場面の対策についてご紹介したいと思います。
これは,先日ご紹介した「名義株(会社設立のために,名前だけ借りて株主になってもらっている)」以外にも,「従業員に株式を持たせたら退職してそのまま連絡が付かなくなった場合」等に起こります。意外と多いケースです。
小規模閉鎖会社では,株式が分散していることはそのままリスクに繋がります。ですので,税務対策上の必要が無い限り,株式は同一人に集約しておきたいところです。
以下では,「行方不明株主への対処方法」についていくつかご紹介をします。
1,所在不明株主の売却手続(会社法197条)
5年以上の時間とそれなりの手間がかかりますが,比較的低コストで済むのがこの方法です。手順をご説明しますと・・・
(1) 5年間続けて(定時株主総会の回数にして「6回」です。「5回」では足りません。この点,間違っている文献もあるので注意!),行方不明株主に普通郵便で株主総会招集通知を送った上で,毎年ちゃんと株主総会を開催する。行方不明株主に送った普通郵便は「宛所に尋ねあたらず」で戻ってくるが,この戻ってきた郵便物(封筒含む)は全部保管しておく。
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(2) 6回分の「戻ってきた郵便物」がたまったところで,「所在不明のAさんの株式??株を売却することにしました。異議がある人は3ヶ月以内に名乗り出て下さい」という内容の官報公告をする。
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(3) 官報公告が掲載されてから3ヶ月後に,その官報公告や5年分の返戻郵便,それに株価の査定書等をつけて裁判所に「所在不明株主の株式売却許可申立」を行う。
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(4) 許可が出たら、その許可通りの金額で他の人(できれば会社経営者)が買い取って終了。買い取り代金を行方不明株主に支払わないといけないが,本人に支払うのは無理なので,供託する。
といった感じです。合計6回欠かさず法定の手順で株主総会を開催して,その後官報公告・裁判所への申立をしないといけない関係で,弁護士の適切な関与が望ましいところです。(せっかく辛抱強く招集通知の返戻郵便を保管していたのに、最後の最後でしくじっては元も子もありません)
時間をかけて,決められた手順をちゃんとふめば,行方不明株主の株式を回収できるのがこの方法のメリットです。
ただ,「もう少し早く株式の回収をしたいんだけど」「5年以上も待っていられない」という方には,別の方法もあります(少し費用が余計にかかりますが)。
それが,不在者財産管理人選任の申立です。次回はこちらの方法についてご説明します。
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また,株式管理・株主総会開催について,本コラムで扱いきれなかった点については,以下で掘り下げて解説しています。経営者様・総務担当者様にとっては必須の情報ですので,是非以下のコーナーもご参照下さい。
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