弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

blog

では,株主が行方不明になった場合は?その2

2016年05月30日

 株主が行方不明になった場合の対策の続きです。
 前回は,「所在不明株主の株式売却許可申立」について説明しました。
時間に余裕がある場合は,前回説明したやり方で大丈夫でしょう。ですが,「会社を買ってくれるという人が出てきた。少しでも早く株式を取りまとめないと話が流れてしまう」といったような,急ぎの事情があるときには向きません
 そういうときは,「不在者財産管理人の選任申立」がお勧めです。

2,
不在者財産管理人の選任申立(民法25条)
 不在者財産管理人制度は,別に株式整理のためだけの制度というわけではありません。ある財産の所有者が行方不明で,他の人が手続を進められない場合全般をフォローするための制度です。「相続人の中に行方不明者がいるため遺産分割が進められない場合に,行方不明者の不在者財産管理人を立てて,遺産分割協議を進める」というのが典型例ですが,今回ご説明しているような,不在者が持っている株式の処理にも有効です。

 手順としては,だいたい以下のような感じになります。

(1) 行方不明者に手紙を出して,「宛所尋ねあたらず」の返戻郵便を受け取る。
 また,行方不明者の住民票上の住所が近場であれば,その住所の現況調査・近隣住民からのヒアリングも行い,報告書化する。(遠方であれば,返戻郵便だけでも大丈夫です。)

(2) 家庭裁判所に(1)の書類(返戻封筒や報告書),不在者の戸籍謄本等必要書類を添えて,不在者財産管理人選任申立をする。不在者財産管理人の候補者を見つけて内諾をもらっておくと,(3)がスムーズです。

(3) 家庭裁判所が申立書の書類審査をした上で,不在者財産管理人を選任する。

(4) 不在者財産管理人と協議をして,行方不明者の持っている株式を売ってもらう。

 初動から株式を買い取るまで,最短で5ヶ月程度で済み,比較的迅速に株式の回収ができるのがこのやり方のメリットです。
 ただ,相続財産管理人を立ててもらうのに,それなりの予納金を家庭裁判所に納めねばならず(事案や裁判所の運用にもよりますが,宮崎家庭裁判所だと大体40万円くらい),費用の負担が大きいです。
 「手続のスピード」「コスト」どちらを優先するか考えて,手続の選択をしましょう。

 なお,行方不明株主の対策として「失踪宣告」の利用を勧めている記事や書籍もありますが,これについては少々注意が必要です。
 失踪宣告は,7年以上音信不通の人について,「その人が死んだのと同じ扱いにする」手続です。この失踪宣告が言い渡されると,その人の相続人へと株式が相続されることになります。
 「行方不明者の相続人との間で株式買取の条件について話が付いている」といった場合はいいのですが,そうでない場合ですと相続人の捜索・交渉が必要になり,かえって手間が増えてしまいかねません。「失踪宣告」+「相続人に対する売渡請求」の合わせ技で株式を買い取るという作戦も一応考えられますが,そこまで凝ったことをするくらいなら最初から不在者財産管理人制度を使った方が早いでしょう。

 中小企業にとって,株式の保有者が分散していることは弱みでしかありません。いざ会社支配権の争奪戦になってからでは手遅れですので,平穏なときこそ
株式の集約を進めていきたいものです。