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そのマイカー通勤,大丈夫?4

2020年10月12日


 前回までは,「マイカー通勤にどういった事情があると,会社まで責任を問われるのか」について,判断要素を複数挙げてご説明しました。

 今回は,その総仕上げということで,会社が備え付けるべきマイカー通勤規程や,許可申請書のひな形を例に挙げつつ解説します。
 この記事の末尾に,「マイカー通勤規程例」と,「許可申請書ひな形(記載例つき)」をまとめて圧縮したファイルをアップロードしていますので,これを適宜自社に合った形に改訂しつつ,以下の解説をお読みください。

1,規程の周知
 まず,マイカー通勤規程の内容を固め,社内で周知をします。
 マイカー通勤を希望する従業員一人一人に対し,このマイカー通勤規程を渡した上で,許可申請書を書かせて提出させましょう。

 許可申請書を提出させる際は「対人対物無制限の任意保険証コピー」「運転免許証コピー」「自宅から会社までの通勤経路」を添付資料として会社に提出させます。
(特に,マイカー通勤希望者の任意保険加入は必須です。任意保険にさえ加入していれば,使用者責任が肯定されようがされまいが,任意保険会社が賠償のフォローをしてくれますので。)

 これら一式の書類を会社が受理したら,許可申請書に会社・その従業員両方の押印がそろっていることを確認したうえで,マイカー通勤を許可します。
 その際,許可申請書コピーを従業員に渡しましょう。(許可申請書原本は会社が保管)

2,運用の徹底
 これで,ひとまずはマイカー通勤の許可手続きが完了したことになります。
 ただ,そのまま放ったらかしていては,いざ事故が発生した時に会社のダメージを抑えることにはなりません。
 その後のモニタリングも定期的に行う必要があります

 従業員ごとに,任意保険が切れる日はバラバラですので,任意保険が満了しそうな従業員がいたら,更新後の保険証コピーを提出するよう促しましょう。運転免許証のコピーも同様です。(この辺の「リマインド時期」は,エクセルなどでいいので一覧表を作り,総務担当者が忘れないようにした方がいいでしょう。)

 また,事故や交通違反を起こしたマイカー通勤者がいたら,その悪質さに応じて,マイカー通勤を取り消すか否かも検討します。
 こういった,許可後の運用徹底をしているかどうかも,マイカー通勤制度には重要です。

3,就業規則への反映
 更に,就業規則本体の服務規程の章にも,「マイカーで通勤をする従業員は,マイカー通勤規程が定める規律内容・手続を順守すること」という号も入れて,悪質なマイカー通勤については単なるマイカー通勤許可取り消し以外に,就業規則上の懲戒を科す余地を残しておきます

 マイカー通期の,会社側による規律はこんな感じでしょうか。
 「あまり深く考えずに,会社の駐車場で余っているスペースを従業員に使わせてやっていた」という経営者の方は,これを機に,「どういった場合にマイカー通勤中の事故について責任を負わされるのか」「どうやったら,会社の責任が軽減されるのか」を検討してみてはいかがでしょうか。