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株式管理・今からでもできる対策を~売渡請求1~

2016年04月18日

 前々回は「中小企業でよくある株式管理のまずさ」前回は「株式管理が杜撰だとどういうトラブルになるか」についてお話をしました。
 これらを踏まえて,今回は「株式管理について今からでもできること」についてお話します。

 さて,株式管理で行き詰まる場面といっても,いくつかパターンがあります。
 今回と次回では「少数の株式を保有する株主が,嫌がらせ目的で何かあるごとに経営陣に噛み付いてくる」という場面をイメージして,対策をご説明しようと思います。「会社設立時,親族に株主になってもらったのはいいが,その後関係が悪化した」という場合に,こういった事態がしばしば生じます。長年の感情的な対立が背景にあったりして,かなりドロドロとした争いになったりもします。

 名義株の場合と違って,この場合は曲がりなりにもちゃんとした株主ですので,問答無用で締めだすわけにもいきません。まずは話し合いによって株式を売り渡してもらうように説得することになるのですが,前述のとおり感情の問題もあって「話を聞いてもらえない」「とんでもない高値での買い取りを要求される」ことが多く,一筋縄ではいきません。
 そういった「相手が売り渡しに素直に応じてくれない場合」には,強制的に株式を買い取る方法を検討することになります。

 相手の保有する株式の割合にもよるのですが,敵対的な株主が亡くなって相続が生じたときに採れる有効な方法として「株式の相続人に対する売渡請求」というものがあります。
 これは,元々の株主が亡くなったときに,その相続人に対して「あなたが相続したうちの会社の株式を,会社に売り渡しなさい」と請求できる制度です。タイミングは,その株主が亡くなったときに限定されるものの,条件さえ揃えば強制的に株式を買い上げることが出来る強力な制度です。


 相続人が温和な人で,「親父が持っていた株式を譲ってほしい?いいですよ。別に会社とケンカするつもりはないし。」と言ってくれるのなら,わざわざこの制度を使う必要はないのですが,敵対的株主の相続人もたいていの場合敵対的だったりします。そういった場合は,この売渡請求の制度が威力を発揮します。

 この制度を活用するときの注意点としては,大体以下のようなものです。

1,定款に,相続人に対する売渡請求の制度を設けておかないといけません。

2,会社が株式を買い取る(=自己株式になる)関係で,会社に分配可能利益がないといけません。細かい言及は省きますが,貸借対照表上かなり余裕がないと買い取り請求は出来ません。

3,株主が亡くなったことを会社が知ったときから1年以内に,売渡請求を相続人に対してしないといけません。

4,売渡請求をかけるにあたっては,「誰に,何株を売るよう請求するか」について株主総会の決議を経ないといけません。この決議をするにあたっては,相続人株主は利害関係人にあたるため議決権を行使できません。

5,買い取り価格は会社と相続人との話し合いが基本ですが,話し合いで買い取り価格の折り合いがつかなければ,裁判所に決めてもらうことになります。分配可能利益がある会社なわけですから,1株あたりの評価額も結構高くなり,買い取り価格は高く付いてしまうことが多いです。

 こんな感じでしょうか。
 ただ,この制度には,いくつか気をつけないといけない落とし穴があります。それについては,次回詳しくご説明します。