弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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中小企業の株式あるある(株式管理のお話)

2016年03月24日

今回は,中小企業の株式についてお話をしようと思います。

 株式会社(昔の有限会社も同じですが)は,株式をどの程度持っているかで会社の支配力が決まります。会社の株式を過半数持っていれば取締役を選任できますし,3分の2以上持っていれば定款変更など大胆な意思決定もできます。
 このように,株式会社では株式を誰がどのくらい持っているかがとても大事なのですが,中小企業ではこの「株式管理」が杜撰なことが多いです。司法試験で勉強したことと,弁護士になって目の当たりにする実態の差が大きすぎてびっくりした記憶があります。

 中小企業でよく見られる「株式管理のずさんさ」の中でよくあるケースをいくつかご紹介します。「うちの会社もそういうのがあるなあ」と心当たりのある経営者の方は,なるべく早く対応されることをお勧めします。

 「でも,同業仲間の会社も似たようなもんだよ?」というお言葉はよく耳にしますし,そういう実態があることはわかるのですが,いざ株式絡みのトラブルが発生したとき,裁判所にそういう反論は通用しませんので,くれぐれもご注意下さい。

1,名義株
 平成2年以前に設立された株式会社では,会社を設立するときの発起人(要するに,最初に株式を持つ人たち)が7人以上必要とされていました。
 そのため,親戚,従業員や知人に「1株だけ株主になってくれないか。出資金はこちらで出すので,名前だけ貸してくれればいい」と頼み込んで形だけ株主になってもらうことが多発していました。この,「他人の名義だけ借りている株式」を名義株といいます。
 その後,この名義株の整理をちゃんとしていればいいのですが,ほったらかしの会社も結構見かけます。そのうち,株式の名義人が亡くなって相続人に移ったり,名義人が失踪したりして,いよいよ訳が分からなくなっていきますので,早めに対処しないと大変なことになります。

2,株券発行会社なのに株券がない

 平成18年5月1日に会社法が施行され,株式会社は「株券を発行しない」のが原則になりました。なので,この日以降に設立された株式会社は,株券の管理については気にしなくていいでしょう。

 ですが,この日以前に設立された株式会社で,定款に「当社は株券を発行しない」という規定が入っていない(というか,普通は入っていません)と,依然としてその会社は「株券を発行しないといけない」ということになります。これを「株券発行会社」といいます。
 株券発行会社にあたるのに,実際には株券を発行していない会社は本当に多いです。
 株券発行会社では,株式を譲渡するのに株券を渡さないといけないのですが,株券自体が発行されていないのでそれもできません。「なんか株券もないままに株式がいろいろ移転しているみたいだけど,結局今誰が株主なんだろう?」というトラブルに繋がります。
 こういった「株券発行会社なのに,実際には株券が発行されていない」という問題も,きちんと解消する必要があります。

 ちなみに,旧有限会社はそもそも株券にあたる制度がないので,この「株券が発行されていない」ということについては気にしなくて大丈夫です。

3,株主名簿が整備されていない
 会社は,株主総会開催時を中心として、株主に対して通知を出すことがあります。この通知を出す相手となる株主は,会社が作成する「株主名簿」によればいいことになっています。
 このように,株主名簿は,会社にとって「誰を株主として扱えばいいのか」を示す大事な名簿で,会社法上も備え付けることが義務づけられています。
 ですが,この株主名簿をちゃんと備えつけて更新している株式会社も,実際はかなり少ないです。
 株主名簿の備え付けをサボっていると,株主への通知先についてもめたときに反論が出来なくなりますので,この点もきちんと整備しておきたいところです。
 なお,ネット上で流れている株主名簿のひな形の中には,会社法で決められた事項(株式の取得日等)の記載欄が抜けているものもありますので,拾ったひな形を鵜呑みにしないよう気をつけましょう。株主名簿を整備するにあたっては,弁護士に名簿の書式をチェックさせた方がいいでしょう。

 以上はほんの一例です。他にも,中小企業が株式管理で陥りやすい罠はたくさんありますので,「自分のところは大丈夫かな?」と思ったら,弁護士に相談をして頂きたいところです。

※平成28年4月5日加筆
「株主総会開催・株式管理」コーナーを新設しました!
 自社の株式がどうなっているのかよくわからないという経営者の皆さんや,総務担当者様は是非ご覧下さい。本コラムでは扱いきれなかった株式管理についても解説しています。

 なお,顧問契約を締結して頂くことで,株式管理について継続的なサポートが受けられるようになります。
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