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株式管理をちゃんとしてないとどうなる?

2016年04月04日

 前回の記事では,中小企業でよくある「株式管理のずさんさ」ついてお話ししました。
 今回は,株式管理をずさんにすることで,会社にどういうトラブルが起こるのかについてお話しします。

 通常の営業を続けているだけのときは,株式管理のトラブルが表面化することはありません。日常の経営については,別に株主の多数決をとって意思決定をしたりする必要が無いからです。

 ですが,いざ会社経営が重要な局面を迎えたとき,「株主が誰なのか」「誰が何株持っているのか」がわからないと,以下でお話しするような大変なトラブルに見舞われてしまいます
 既にこういったトラブルは散見しますが,特に「中小企業の世代交代」が控えている今後は急増するでしょう。

1,会社の大事な意思決定がひっくり返る恐れがある
 「取締役に誰を選任するのか」「事業譲渡をするのかしないのか」「定款変更」など,会社にとって大事な決定事項はいずれも株主総会を開いて,決められた割合の賛成を得ないといけません。
 ですが,そもそも誰が株主なのかわかっていないのでは,株主総会の招集通知を誰に送るのかすら決まりません。分かっている株主にだけ招集通知を送って株主総会を開いて(開いたことにして)も,招集通知が漏れている株主総会の決議は取り消されることがあります

 特に、設立から時間が経ち,株式の整理もしないで放ったらかしていると,株主に相続が生じたりして,会社と株主との関係はとても希薄になっています。その結果,会社に対して平気で敵対的行動をとる株主も現れたりします。「この株主総会,Aさんに招集通知を出していないから,決議は無効になるのでは?」といったような感じで,株主総会決議の手落ちを追及されることはこれまでもよくみられましたが,これからはもっと増えるでしょう。
 こんな感じで,誰が何株持っているかの管理をちゃんとしていないと,株主総会決議がひっくり返されるかも知れない,とビクビクするはめになります。そういった事態を防ぐためにも,株式管理はきちんとしておきたいところです。

 なお,株式管理は,「誰が株主なのかちゃんと把握する」こと以外に,「やっかいな人に株式が渡らないようにする」ことも含まれます。これについては,会社法で一部手当がされたところもありますので,別の機会にご紹介しますね。

2,事業承継にとって大きな足かせになる
 銀行やM&Aの会社が最近事業承継をテーマにしたセミナーをたくさんやっていることからも分かりますように,多くの中小企業が世代交代の時期を迎えています。
 事業承継の詳細についてはリンク先に譲りますが,財務状況が健全な会社の承継には,通常「その会社の株式全部を譲り渡す」という方法が取られます。(「株式全部を後継者の長男に相続させる」とか,「外部の第三者に株式全部を適正な評価額で買ってもらう」など)
 ですが,ここで「一部名義株が混じっている」「一部の株主が行方不明」といった事情があると,たとえその株式の割合がほんの少しだったとしても,事業承継の大きな障害になってしまいます

 会社を譲り渡す経営者にとっては「3分の2以上の株はちゃんと渡しますから安心して下さい。定款変更でもなんでもできますよ。」と言いたいところですが,会社を引き継ぐ新経営者にとってはそうもいきません。「名義株や行方不明の株主についてちゃんと整理して,株式を100%取りまとめてもらわないと会社は引き取れない」と言われてしまうのが普通です。会社を買い取る側にとっては,いつどういう形で少数派の株主が会社経営に横やりを入れてくるかわからない状態で会社を渡されても困るというわけです。

3,まとめ

 そんなわけで,普段の会社経営では特段気にならない「株式管理」ですが,「会社の重要な意思決定」「会社の承継」といったとても大事な局面では,株式管理のずさんさは致命傷になります。
 これらの重要な局面に直面してから株式の把握・整理をしていても絶対間に合いません。会社が平和な時こそ,自社の株式がどうなっているかチェックし,「名義株」や「株主の行方不明」,「何かあるごとに経営陣に嫌がらせをしてくる少数株主」といった困った事情が出てきたら,弁護士関与のもとで株式の整理・対策をしましょう。