弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

blog

働き方改革9~時間外労働・法改正後の規制~

2019年05月20日


 さて,従前の時間外労働についての注意点は,前回までにご説明したような感じです。
 従前の時間外労働についてのルールも,中小企業にとっては「厳しい!」と思われたかも知れません。
 ですが,来年4月から中小企業にも適用される新たな「時間外労働規制」は,これまでの比ではありません
 今回から「改正後の時間外労働規制」「対応策(特に三六協定の書き方)」「その他派生する問題点」について説明していきます。

<改正後の時間外労働規制について>
 これまでも「厚生労働省が定めた基準」「過労死が発生したときに労災扱いとなる目安」等,過重労働についてはいくつかの基準がありました。
今回の法改正は,これら従来の基準をまぜこぜにしたせいで,とても分かりづらくなっています。つまり・・・

1,法定休日以外の勤務日の合計残業時間は月45時間以内にしないといけない。
但し,三六協定の特別条項に「臨時に残業が必要な事情」を記載しておけば,年間12ヶ月のうち6ヶ月までは45時間を超えてもいい。

2,法定休日以外の勤務日の合計残業時間は年間360時間以内にしないといけない。
但し,三六協定の特別条項に「臨時的な事情」を記載しておけば, 年間720時間までセーフ。

3,法定休日もひっくるめた時間外労働は,単月100時間未満にしないといけない。

4,法定休日もひっくるめた時間外労働は,直近「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」どれをとっても,80時間以内に収まるようにしないといけない。

というものです。
 「法定休日」というのは,正確な説明がしづらいのですが・・・ひとまず「7日連続で働いたときの7日目」と考えておけば良いでしょう。
(就業規則に余計なことを書いていると少し違ってきますが・・・

「1と2は法定休日の労働時間を除外し,3と4は法定休日の労働時間もひっくるめて考える」
1と2は三六協定の記載次第で例外OK」
という,とても分かりづらい規制になっています。(1と2は厚生労働省の限度基準,3と4は過労死の労災判断基準の名残です)

 前回までにお話ししたように,残業時間については,これまでも厚生労働省が定めた限度基準はあったのですが,法的拘束力はありませんでした
 そのため,三六協定に書いた残業時間に収まるようにすれば,基本的に法律違反にはならなかったのです。(もちろん,労基署が三六協定の受領を渋るということはありましたし,過剰労働による過労死を招いたときの責任は別途発生しましたが)
 ですが,今回の法改正後は,以上の1~4を超える残業をさせてしまうと法律違反になってしまい,刑事処罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)まで科せられてしまいます

 特に,中小企業にも全面的に適用される来年4月以降は,法令遵守を徹底させる「見せしめ」に何社か摘発されるのではないかと予想します。
 ですので,残業が当たり前になっている会社は,今から残業時間削減・管理の準備をしましょう。

 ひとまず,宮崎県の中小企業の当面の目標としたいのは以下の二点です。
「年間6ヶ月は,(休日労働を含めた)月間残業時間を45時間以内にする」
「45時間を超えてしまう残り6ヶ月についても, (休日労働を含めた)月間残業時間80時間以内を死守する」
(厳密に言うと,これらを達成しても2にひっかかる可能性はあるのですが,レアケースではないかと)

 こう書くと「3には,月間100時間未満と書いてあるよ?80時間以内死守なんて大げさな・・・」「1ヶ月くらいなら,80時間を超えても良いのでは?」と言われそうです。
 ですが,1ヶ月でも80時間超残業の月が出てきてしまうと,4(=直近平均残業時間の規制)のクリアがかなり難しくなります

 例えば,夏に忙しくなる飲食店をイメージしてみて下さい。8月の残業時間が90時間だったとして,その前後の7月や9月の残業時間を70時間以内に抑えることができるでしょうか?
 もう,「単月100時間未満」の基準はないものと思って,月間残業80時間以内を徹底しましょう

 以上の二点の鉄則を守ればひとまず何とかなるとは思いますが,心配であれば働き方改革に特化した勤怠管理ソフトを入れて,労働時間上限を超えそうになったらアラームを鳴らしてくれるような設定をしておく,というのも一つの手です


<顧問契約のお勧め>
 顧問契約を締結して頂くことで,「働き方改革」対応について継続的なサポートを受けられるようになります。
当事務所の顧問契約の詳細はこちら
http://www.tanida-lawyer.jp/advisory-contract.php