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そのマイカー通勤,大丈夫?2

2020年09月14日

 前回の記事では,従業員のマイカー通勤中の交通事故によって,会社が使用者責任を問われることがある,ということをお話ししました。
 今回は,交通事故発生時,どういった事情がある場合に,会社が使用者責任を問われてしまうのかについてご説明します。

 以下の判断要素をざっとお読み頂いて,「これだと,うちの会社はやばいのでは・・・?」と思われた経営者様は,次回以降の記事を参考に,是非対策を取って頂きたいと思います。
(話の底を割ってしまいますが,「マイカー通勤規程」や「マイカー通勤許可申請書のひな形」もアップロードしていく予定です。)

 さて,従業員が,休暇中にマイカーで交通事故を起こしても,会社が責任を問われることは基本的にありません。
 逆に,従業員が業務中に事故を起こした場合は,それが社用車であれマイカーであれ,会社が使用者責任を問われます。
 こんな感じで,従業員が起こした交通事故について,会社が使用者責任を問われるかどうかは「会社業務に関係あるかどうか」で決まるといっていいでしょう。

 では,従業員によるマイカー通勤は,休暇中・会社業務中,どちらにあたるのでしょうか?

 これは非常に微妙で,マイカー通勤途中の交通事故・その使用者責任が問題になった過去の裁判例を見ても,判断が分かれています。
 結局のところ,従業員のマイカー通勤を巡る様々な事情を総合的に判断して,会社が使用者責任を問われたり,問われなかったりしているようです。

 その判断要素は色々あって,確固たる基準が定立されているわけでは無いのですが・・・ざっと並べると以下のような感じです。

1,従業員のマイカーが,会社業務に使われているかどうか
 たとえば,従業員が通勤に使っているマイカーを,そのまま会社業務の配達とか営業で使用させている場合は,会社の使用者責任が問われやすくなります。マイカー通勤と会社業務が連続していると判断されるわけです。
 そのため,従業員のマイカーを会社業務に使わせるのは,極力避けたいところです。

2,マイカー通勤が必須かどうか
 「マイカーを使用しないと,とても通勤ができない」という事情がある場合は,マイカー通勤が労務開始に不可欠な前提ということになります。これは,ひいてはマイカー通勤が業務の一部と扱われ,使用者責任を問われやすくなります

 実は,宮崎県ではこの「マイカー通勤が必須かどうか」が,致命的な判断要素になります。
 ご存じのとおり,宮崎県内では,「電車は1時間に1本」「バス停もそれほど網羅されているわけでなく,本数も少ない」ということもあって,公共交通機関だけで通勤できるケースはむしろ少数です。
 仮に公共交通機関の乗り継ぎだけで通勤しようとすると,すさまじい距離の徒歩を強いられたり,始業時刻の2時間前に会社に到着してしまう等の不便が生じるケースは,身近にもあるのではないでしょうか。

 この要素ばかりは,会社側が努力してもどうにもなりません。
 そのため,もし会社の立地からして,マイカー通勤が必須というのであれば,「マイカー通勤中の交通事故=使用者責任を追及される」と割り切って,後にご紹介する対策を取っていくしかないでしょう。

(続きます。)