弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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債権回収について2~なぜ大事なのか?~

2017年10月23日

 さて,なぜ債権回収について勉強することが大事なのか,ですが・・・理由としてはだいたい以下のようなものが挙げられます。言われてみれば当たり前のことばかりなのですが,それ故に疎かになりがちで,大火傷をする経営者の方も少なくありません。

1,企業の資金繰りの土台になっていること
 どのような業種であれ,企業活動は「商品・サービスを提供してお金を頂く(息を吸う)」→「頂いたお金で経費や仕入れ,金融機関への返済をまかなう(息を吐く)」の繰り返しで継続していきます。
 ここで,払ってもらえて当たり前のお金を払ってもらえなかったらどうなるでしょうか?
 言うまでもなく,この繰り返しが続けられなくなり,事業は停止します。「払うと約束したお金を払ってもらう」ことが当たり前になりすぎて,ここでつまづいた時への備えがおそろかになっている経営者の方は多いものです。
 逆にいえば,債権回収(と,先日集中連載した「労務管理」)さえきっちり押さえておけば,企業が遭遇する法的リスクの大半については備えができたことになります。

2,フィクション等による誤解が多い分野であること
 これまた,労務管理と似たようなところがあるのですが・・・債権回収もフィクションでしばしば不正確な描写がされることもあって,誤解をしている方が多いです。
 例えば,借金で火だるまになった人が,家の中の家財道具に根こそぎ札を貼られるシーンとかがありますが(最近は少ないですかね?),あんなの実務ではあり得ませんし,仮にそれに近いことができたとしてもほとんど債権回収には役立ちません。この辺は後日の各論でもお話ししようかと思いますが,とにかくフィクションで得られる債権回収の知識はあまり当てにしてはいけません。

3,公的な救済措置がほぼ存在しないこと
 むしろ弁護士より経営者の皆さんの方が詳しいことではありますが・・・日本では本当に様々な「補助金」「助成金」が整備されています。「新しい事業を興す」「人を雇用する」「設備投資する」・・・企業が「プラス方向に躍進するための」制度がたくさんあります。
 ですが,「債権が焦げ付いた」といったような「マイナスへの備え・救済措置」については,冷淡と言っていいほど整備されていません。せいぜい,倒産防止共済に加入していた場合に融資を受けられる,くらいのものでしょう。
 たまに,「取引先が倒産して売掛金が焦げ付いた。この焦げ付きを立替えてくれる制度はないのか」と聞いてこられる社長がおられますが,そんな制度は「ありません」。それだけに,債権回収については各企業がきっちり勉強して,日常業務の中でも備えておかないといけないのです。

 ・・・と,債権回収について勉強することの大切さを説明したところで,次回から本格的な内容面に踏み込んでいきます。
 ほんの少しの手間でできるような工夫をお伝えしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。