(前回「働き方改革2~有給休暇・誤解あるある~」の続きです)
3,パートタイマーも有給休暇を取る権利がある
これも誤解あるあるです。
もちろん,週5日間働いている正社員と全く同じ有給休暇が付与されるわけではありませんが,週の所定労働日数や勤続期間次第では,入社したての正社員よりも多い有給休暇を得ることがあります。この点はくれぐれもお気を付け下さい。
パートタイマーに与えられる有給休暇の日数は、以下の厚生労働省の解説が参考になるでしょう。
特にこの点は,今回の法改正の一つ「有給休暇を年5日以上取らせる義務」に密接に関連します。パートタイマーによっては,年10日以上の有給休暇を取得し,「5日以上の有給付与義務」の対象になり得るからです。
特に,週4日稼働のパートタイマーですと,勤続3年半で10日間の有給休暇が発生する(=会社側に有給休暇を取らせる義務発生)ようになりますので,パートタイマーの有給付与義務で失敗する中小企業は案外出てくるのではないかと思います。
せっかく正社員について有給休暇の管理を徹底して,年5日以上とらせるようにしたのに,パートタイマーの有給管理の点で失敗しては面白くありません。
パートタイマーの有給休暇の管理も意識して行うようにしましょう。
4,有給休暇の買取り
これも,顧問先様から頻繁に受ける相談です。
まず,そもそも「会社側が主導して従業員の有給休暇を買い取ることが出来るのか」ですが・・・これは禁止されています。
有給休暇という制度自体,従業員にきちんと休養を取らせることを目的としているので当然と言えば当然です。
特に,今回の法改正は「会社の方から働きかけて,無理矢理にでも有給休暇をとらせないといけない」という趣旨のものですので,こういった有休買取については今後一層厳しい目で見られると予想されます。
「従業員に渡した買取金は返してもらえず,有給休暇日数は減らず,それどころか有給取得ノルマも達成できず刑事処罰の対象に・・・」ということにもなりかねません。
「原則として,有給休暇の買い上げは禁止」,このことは今後徹底しましょう。
これと裏表の問題として,「従業員から有給休暇の買取を要求されたときに,会社が応じないといけないのか」というご質問も良く受けますが,会社側がこういった要望に応じる必要はありません。そもそも,原則として有給休暇の買取は禁止されているわけですから。
ただ,有給休暇の制度趣旨(=従業員に休養を取らせる)に抵触しないような場面,例えば退職を申し出ている従業員が有給の買取を要求してきたときは,買い取っても問題ない,とされています。
特に,大した引き継ぎなどもない従業員の場合ですと,「有給買取を拒んでも,残りの有給を消化されてしまうだけ。」というケースも多いです。こういった場面では,多少割引した金額で有給を買い取った方が合理的といえます。
ただ,その場合も,今回の法改正の「年間5日以上の有給消化義務」はクリアしていないといけません。
ですので,その従業員に年間5日の有給休暇をまだ実際に取らせていない場合,有給全部を買い上げてしまうと違法になってしまいます。(個人的には,退職する従業員についてまで,「5日以上の有給付与」を義務づける意味なんてどこにあるんだ,と思うのですが・・・改正法に特段例外規定が設けられていない以上,原則通りに対応するしかありません。)
これまで退職従業員の有給買い上げを実施してきた会社様は,今後この点にお気をつけ下さい。
5,有給休暇取得に理由は不要
今回の法改正と関連性はやや乏しいのですが,有給休暇制度そのものについて誤解をしている会社も多いので,この機会に触れます。
従業員が有給休暇をとるのに,特に理由は要りません。
会社の業務がとても忙しく修羅場状態であったとしても,「家でゴロゴロしたいから」という理由で有給をとってもいいのです。
たまに,有給休暇の申請書ひな形に「有給を申請する理由」という欄を設けているのを見かけますが,これは意味が無いどころか,有給休暇の取得を事実上牽制していると捉えられかねません。いっそ,理由を問う欄は,今回の法改正を機にひな形から削除してしまいましょう。
「有給休暇の誤解あるある」は以上のような感じです。
これらの中で,今回の法改正への対応について,既にだいぶ触れてしまった感がありますが,次回以降は更に踏み込んだ対応方法について解説していきます。
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