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契約書のイロハ(法務担当者様向け)3

2018年09月24日

(前回「契約書のイロハ(法務担当者様向け)2」の続きです)

3,どうしても実印でないとダメなの?
 さて,前回は「確実性をとるのなら,契約書に押させる印鑑は実印一択」「実印は印鑑登録証明書とセットでないと意味が無い」というお話をしました。

 では,契約書を取り交わすときは,いつも実印でないといけないのでしょうか?
 もちろん,実印+印鑑登録証明書のセットを相手に用意させるのが万全です。ですが,ただの認め印でも,直筆のサインと一緒に押印させれば,実際には揉める可能性は低いです。
 多くの人は「直筆でサインをしたから,筆跡鑑定されてしまったら自分の字だとばれてしまう。シラを切っても仕方ないな」と考えるためでしょう。
 実際の契約では,相手に印鑑登録証明書を用意させるのを待っていられない,という場面もあるでしょう。そういったときは,せめて契約相手の直筆サインをボールペンで書いてもらいましょう

4,じゃあ,直筆サインで十分じゃないの?
 ・・・と,3を読んだ方は思われたかも知れません。
 ですが,実際には,話はそう簡単ではありません。
 確かに,直筆サインは筆跡がきっちり残るのですが,実際に筆跡鑑定をしてその人のサインかどうかを証明するとなると,鑑定費用だけで数十万円かかります
 更に,数十万円払って鑑定をしてもらっても,肝心の裁判所は筆跡鑑定をあまり重視しません。鑑定結果が「同一人の筆跡と認められる」と出ているのに,「署名は偽造である。よって契約は成立していない。」という正反対の判決が出る,というのはさほど珍しくありません。
 結局,筆跡鑑定は,世間のイメージほど科学的ではないし,決定的な証拠にはならない,というわけです。(それなのに,筆跡鑑定の費用として数十万円取られるというのは今ひとつ納得いかないのですが・・・)

 ですので,「直筆のサインをさせているから大丈夫。いざとなったら,筆跡鑑定すればいい」という考えは捨てましょう。少額の契約や,軽く一筆とるための念書ならまだしも,重要な契約はやはり実印+印鑑登録証明書を押さえたいところです。