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中小企業の労務管理 ~賃金全額払いの徹底~

2017年02月13日

 今回は,賃金全額払いの徹底をテーマに解説をしていきます。
 「中小企業の労務管理 ~よくある問題点4~」の,「6,従業員の給料から天引きをする」に対応する解説です。
 一般常識で「このくらいやっちゃっていいんじゃない?」と即断して足下をすくわれる典型的な場面ですので,今回のコラムを機に正しい対応を身につけて頂ければと思います。

1,弁償の範囲
 さて,まず「従業員が会社に損害を与えたときに,従業員にどのくらい弁償させるか」という問題があります。
 「中小企業の労務管理 ~よくある問題点4~」でお話ししたように,従業員の故意によるもの(横領など)であれば,全額弁償させて構いません。
 ですが,従業員に過失があったに留まる場合,従業員が負う責任は一般に3分の1~4分の1とされています。
 もちろん,従業員の過失の程度や,会社側の管理体制等によって多少のぶれはありますが(従業員の過失が小さい場合は,従業員が一切責任を負わないこともあります),この辺が一つの目安になるでしょう。

 ただ,この負担割合が原因で後日揉めてはいけませんので,従業員に一定の負担をさせるのであれば,その旨簡単な合意書を作っておくのが無難です。

2,弁償のさせ方
 既に「中小企業の労務管理 ~よくある問題点4~」でも触れましたが,従業員に弁償させるに当たって,一方的に給料から天引きするのはアウトです。(たとえ横領金を返還させる場合であっても)
 もっとも,法律が禁じているのは「一方的な天引き」です。会社と従業員が,お互い納得ずくで給料と賠償金を相殺するのであれば,その相殺は有効になります。
 ですので,「??年??月分の給料??円と,横領による賠償金??円を対当額で相殺する」という「相殺の合意書」をきっちり取り交わして精算すれば,この点はクリアできます。

 もっとも,この相殺は従業員の真意によるものでないといけません。後で従業員が「上司にせっつかれたせいで,本当はイヤだったけど合意書に押印した」などと言い出されると相殺の合意自体が崩れてしまいます。
 こういった蒸し返しを防ぐには,合意書取り交わし前に,その従業員に一定の熟慮期間を設けるのも一手でしょう。

 従業員が会社に与えた損害を弁償してもらう場面というのは,案外多いものです。
 対応方法をある程度固めた上で管理職に周知しておくと,現場も混乱せずにすみますので,対応方法の確立をお勧めします。