弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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中小企業の労務管理 ~よくある問題点4~

2016年09月28日

(前回「中小企業の労務管理 ~よくある問題点3~」の続きです。)

6,従業員の給料から天引きをする
 「従業員が職場の設備をうっかり壊したので,その弁償代全額を給料から天引きする」というのを結構平気でやってしまう会社があるのですが,これは2つの点で問題があります。

 一つ目は,「損害賠償額の制限」という問題です。
 横領など故意の犯罪行為であれば全額弁償させていいのですが(当たり前ですね),「不注意で会社の備品を壊した」といった過失による損害は,全額従業員の負担とすることは難しいです。「会社は,従業員のおかげで利益を出しているんだから,従業員による損害もある程度かぶりなさい」という理屈から,賠償額が一定割合に制限されます。
 どの程度に割り引かれるかは,一般に「業務の性質」「従業員の待遇」「会社が保険に加入していたか」等から総合的に判断することになりますが,いずれにしても損害額全額を従業員に負担させるのは厳しいです。

 二つ目は,「賃金全額払いの原則」との関係が問題になります。
 「会社が一旦従業員に賃金を全額払った後で,従業員から弁償金を会社に払ってもらう」というのは遠回りですし,従業員が素直に払ってくれないという不安もあります。そのため,「会社の従業員に対する損害賠償請求権」と「従業員の賃金」を相殺して簡単に済ませてしまいたいな,という気持ちは分かります。
 ですが,取引先との精算等と違って,従業員の賃金は,会社から一方的に相殺をすることができません。たとえ,横領の弁償金を回収する場合であってもです。
 これをやってしまうと,賃金全額払いの原則に引っかかってしまいます

 こんな感じで,従業員から金銭を回収するのは結構デリケートな問題を生じるのですが,この点をおおざっぱに扱っている会社は多いように思います。


7,簡単に従業員を解雇する
 最近はこういう経営者も減ってきたようですが,それでも「解雇が簡単には認められないこと」はまだまだ正確に理解されているとはいえません
 ドラマや漫画等,フィクションでの極端な描写もその一因かと思われます。
「課長島耕作」では,社長が島耕作に対して「お前は労働組合に所属していないんだから,社長の俺がクビと言ったらクビなんだ」と宣告するシーンがありましたが,あんなの絶対通用しませんので真に受けないで下さいね。)

 さて,会社経営者から見た場合の,解雇したくなる従業員の要素としては,
・社長や上司に反抗的な態度をとる
・業務上のミスが多い
・営業成績が振るわない
・従業員間の和を乱す
・遅刻・欠勤が多い
etc...
 こんな感じでいろいろあるものですが,これらを理由として解雇するのは難しいです。というか,これらの要素を一人で全部兼ね備える困った従業員でも,一発解雇は難しいでしょう。それくらい,解雇のハードルは高いのです。

 なお,「解雇予告手当をきちんと支払ったら,解雇できるんじゃないの?」という社長もおられますが,解雇予告手当は即時解雇のため最低限必要なものに過ぎません。
 解雇予告手当を払ったからといって解雇が有効になる保証は全くありませんので,くれぐれも誤解なきようお願いいたします。

(解雇について,もう少し続きます)