弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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中小企業の労務管理 ~よくある問題点3~

2016年09月05日

前回「中小企業の労務管理 ~よくある問題点2~」の続きです。)
 さて,破産手続の連載で少し中断しましたが,引き続き労務管理のお話に戻りますね。

4,「管理職手当」「営業手当」等を別途支給することで,無制限に残業をさせている

 某ハンバーガーチェーンの労使紛争で「名ばかり管理職」という言葉が一躍有名になりました。
 労働基準法上は,「
監督若しくは管理の地位にある者については,残業代を払わなくてよい」ということになっています(労働基準法41条2号)。この規定を根拠にして,さほど権限のない従業員にもっともらしい肩書を与え,サービス残業をさせて問題になったのが「名ばかり管理職」です。

 これだけ聞くと,「じゃあ,形だけでなく,ちゃんと権限を与えていればいいってこと?どういう工夫をすれば,残業代を払わなくていいの?」という質問がきそうです。
 ですが,この「管理監督者にあたるかどうか」という点については,裁判例で大変厳しい条件が課されており,クリアーするのはほぼ不可能です。
 このコラムをお読みの経営者に「うちはちゃんと店長手当をつけているし,出勤時間・退勤時間については自由にさせているから,管理監督者といえるだろう。大丈夫大丈夫。」という方がおられましたら,そういうやり方は即刻やめて下さい。残業代請求をされたら莫大な割増賃金の支払を命じられることになります。
(その程度の待遇でクリアーできるほど,管理監督者の要件は甘いものではありません)

 また,管理監督者とは少しニュアンスが違いますが,飲食業・小売業等のBtoCの業種でよく見かけるのは「ある程度の残業を見越して,固定給とは別に固定残業手当を支給している。そして,残業時間が多くなっても,固定残業手当以外の残業代は払っていない」という賃金体系です。(「固定残業手当制度」の不完全版といった感じでしょうか)
 固定残業手当制度の必要性自体は理解できますし,やり方を間違えなければメリットもあるのですが,深く考えずに「残業代計算の手間が省けて楽ちんだ」なんてノリでこの賃金体系を導入すると大火傷をします。
 個人的にはこの「固定残業手当制度」はお勧めしないのですが(行政も,固定残業手当に対しては今後締め付けを強めそうな傾向にあります),仮に導入するとした場合の注意点を後に詳しくご説明します。

5,休憩時間にも仕事をさせている
 この点についての意識が甘い経営者の方は未だに多く見受けられます。
 一応「正午~午後1時」といったように休憩時間を設定しているけれど,お客様からの電話や受付対応をこの休憩時間中にさせていることがあります。
 「たまたまアクシデントがあり,休憩時間中の従業員に電話をとらせてしまった」くらいであればまだしも,休憩時間中の労働が常態化しているのは大変危険です。仮に残業代請求をされますと,この「休憩時間帯なのに仕事をさせていた」時間についてもみっちりと割増賃金を請求されることになります。

 「休憩時間中に電話をちょくちょく取らせていたのは確かだけど,それ以外の時間は弁当を食べたりスマホをいじったりしていたよ?あくまで休憩時間の一部だけ仕事をさせただけなんだから,休憩時間全体について賃金請求なんてできないでしょ。」と仰る社長は多いのですが,これは基本的に通用しません。
 「休憩時間は絶対仕事をさせない」か,「休憩時間中も割増賃金を支払うと割り切る」といった方針変更が必要でしょう。

(続きます)