弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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マイナンバー制度9~就業規則の改定~

2015年09月11日

 前回「マイナンバー制度8~マイナンバーの提供を拒否されたら?~」では,マイナンバーの提供を拒否された場合の対応策・書式をご紹介しました。
 今回は,就業規則をマイナンバー制度に対応させるための注意点をいくつか述べさせて頂きます。マイナンバー制度開始に伴って就業規則の改定は必須ですので,くれぐれもご留意願います。(ちなみに,「マイナンバー」というのはあくまで通称で,法令上の正式名称は「個人番号」です。そのため,就業規則に盛り込む際は「個人番号」という言葉を使いましょう。)

1,採用時の提出書類
 従来の就業規則には,入社が決定した従業員に提出してもらう書類として「誓約書」「身元保証書」・・・などが列挙されているかと思います。
 この列挙事項に,以下の項目を加えて下さい。

・個人番号カード又は行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行規則1条1項1号に定める書類(運転免許証,旅券等)及び通知カード(原本を会社に提示するか,写しを会社に郵送する方法による)


 すごく長ったらしい項目になりますが,先だってご説明した本人確認書類を就業規則に正確に反映させるとなるとこのようになります。
 この法律,正式な(?)略称が固まったら,ここの記載ももうちょっと短くできるのですが・・・今のところ統一的な略称はないみたいですね。

2,服務規律
 従来の就業規則には,「服務規律」という条項があるかと思います。
「勤務時間中は会社の指揮命令に従い,定められた業務に専念しなければならない」といった遵守事項がズラッと並んでいるアレです。
 そこに,以下のような事由を追加して下さい。

・労働者は,「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に規定された会社による個人番号の提供の求め及び本人確認に協力しなければならない。

 前回もお話ししましたように,従業員がマイナンバーの提供を拒否するという事態も考えられます。そこで,服務規律に入れることで本人確認手続等への協力を促します。
 なお,「マイナンバー提供を拒否したら懲戒処分!」という考え方もありうるところですが,懲戒処分は会社秩序を維持するために必要な限度で行われる必要があり,マイナンバー提供の拒否が懲戒事由足りうるかどうかは少々微妙なところです。そこで,マイナンバー提供拒否についてはあえて懲戒事由に入れず,服務規律に含めるのにとどめるのがバランスのとれた処理と考えます。

3,懲戒解雇事由の追加
 少々さかのぼりますが,
マイナンバー制度3~禁止事項・罰則~でご説明しましたように,「マイナンバーの漏えい」は立派な犯罪です。マイナンバーの漏えいがあった時は,その従業員だけでなく会社まで処罰されてしまいます。
 ですので,この点について違反があった時にきっちり懲戒処分ができるよう,懲戒解雇事由に追記しておきたいところです。
 懲戒解雇事由の書き方としては,以下のようになると思われます。

・正当な理由なく会社保管に係る個人番号ないし特定個人情報ファイルを外部に漏えいして会社に損害を与え,又は業務の正常な運営を阻害したとき。

 このあたりは,実際に懲戒処分の有効性を争うような事件・裁判例が実際に現れないと何とも言えないところですが,現時点では上記の規定が無難かと思われます。

 他にも,細かい単語の磨き上げをしていくときりがないのですが,ひとまず上記3点だけは抑えておきたい改定ポイントです。

 次回は,従業員等から取得したマイナンバーの管理についてご説明をしたいと思います。

(※追記)最近,検索エンジンからこのページに直接飛んで来られる方が多いようですので,以下に「マイナンバー関連記事一覧」と,「書式ダウンロードコーナー」のリンクを貼っておきます。ご活用頂けますと幸いです。
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