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債権回収4~証拠の使い分け~

2017年11月20日

 さて,前回は「債権の証拠化が大事」というお話をしました。
 とはいえ,全ての取引について分厚い契約書を取り交わす,なんてのはあまり現実的ではありません。取引の規模・頻度・相手方の属性に応じて,証拠化の方法を使い分けるのがよいでしょう。

 証拠化の方法をざっくり分類しますと,だいたい以下のようになります。

1,毎回異なる相手と,高額の単発取引をする場合
 特注品の受注(注文住宅や特注機械の製造など)がこれにあたります。
こういった場合,取り決めるべき要素はビジネスモデルに応じて必然的に決まってきます。少なくとも,「取引相手ごとに,毎回一から取り決めごとを考えないといけない」なんてことにはなりません。
 こういったケースでは,「自社のビジネスモデルに合った契約書案を弁護士に作成させて,ひな形として持っておく」「普段と勝手が違う注文を受けるときは,ひな形の契約条項を修正するかどうか,弁護士にその都度相談する」のがよいでしょう。

 なお,相手方との力関係にもよりますが,契約書の類いはなるべく自社で用意したものを使うべきです。(裁判管轄や損害賠償条項などは,きっちり自社に有利な条項で固めておかないと,後で大ダメージを受けるためです)

2,毎回異なる相手と,少額の単発取引を繰り返す場合

 1と違って,1回ごとの取引額が少額というケースです。消費者向けネット通販や,小規模事業者へ広く・浅く浸透を狙うビジネス(例:事務用品や食材の供給)がこれにあたります。
 この場合も,自社の契約書ひな形を相手方取り交わしてももちろん構いません。契約書であれば,「損害賠償の制限」といった免責条項を設けることもできますので(消費者が相手ですと,消費者契約法等の修正がかかりますが),法的リスクのコントロールにも役立ちます。

 とはいえ,取引額が少額の場合,その都度契約書の押印を求めると相手方が面倒がって取引自体をやめてしまうおそれもあります。
 こういった場合は,「相手方にメールで申し込んでもらう」「簡単な申込書ひな形のデータを配布し,そのデータ(Word,Excel等)に申込内容を記入してもらったものをFaxやメールで送ってもらう」という簡便な方法でも構いません。
 しばしば誤解されていますが,別に印鑑を押さなくても契約はちゃんと成立しますし,証拠としても有効です。大事なのは「相手方が申し込んできた」ことを形に残すことです。
 そういった意味では,「送受信者」「文面」がきちんと残るメールは,証拠としてはとても優秀な部類に入ります。(全くの余談ですが,不貞慰謝料の裁判では,メール・LINEのメッセージ履歴が証拠として猛威を振るいます・・・くれぐれもお気を付け下さい。)

 逆に,自社の押印しかない書類(例:請求書)は,相手に「そんなの知らない。そちらが勝手に請求書を作っただけでしょ?」と言われてしまいますので、証拠としては機能しません

 全ての取引について詳細な契約書を使うのではなく,取引額に応じて省力化して,バランス良く証拠化を進めていきましょう。
 (続きます)