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債権回収5~契約書の注意点~

2017年12月04日

(前回「債権回収4~証拠の使い分け~」の続きです)

3,特定少数の得意先と,取引を繰り返す場合
 1・2と違って,特定の得意先と取引を繰り返す場合です。
 中規模以上の事業者に,業務上不可欠な材料類を供給するビジネス(例:建設資材の供給)等が考えられます。
 継続的な付き合いになりますので,「契約書への押印を求めたら相手が面倒がる」といったことはありません。(ここで面倒がる相手なら,付き合わない方がいいでしょう
 むしろ,繰り返し取引を行う関係で,基本的な取り決め(=納期・最低発注数・検収方法など)をきちんと固めておく方が重要です。
 
 こういったケースでは,「基本契約書」と「発注書」を併用する方法が有効でしょう。
 つまり,継続的な取引の基本ルールを「基本契約書」できっちりと定めた上で,毎回の発注は定型の発注書で行ってもらうわけです。これなら,細かい条項を詰め込んだ契約書の取り交わしは最初の1回で済む上,毎回の発注は手軽に行えます
 前回解説した1と2のハイブリッド方式ですね。

 以上のような感じで,取引規模・態様に応じた債権の証拠化をしておきましょう。
 また,使用する契約書や発注書については,弁護士のチェックを是非入れて頂きたいところです。
 ネット上に転がっている契約書を内容も確認せずにそのまま使い回すケースを見かけますが,こういった契約書には
「遠方の裁判所でしか裁判ができない」
「納品が遅れた場合に高額の賠償義務を負う」
「相手の経営が明らかに傾いているのに,納品を拒絶できない」
といった,供給者側にとって軽視できない不利な条項が含まれていたりします
 労務関係における就業規則もそうでしたが,「内容を確認していない契約書」を使うくらいなら,むしろ契約書を取り交わさない方がまだマシといえるでしょう。

 特に,3の「基本契約書」方式では,契約書の記載がその後の受発注全てに影響しますので,うかつな内容のまま取り交わしたときのダメージは甚大です。
 契約書の法務チェックはくれぐれも怠らないようにお願い致します。