弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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契約書と弁護士2(法的拘束力)

2018年06月04日

(前回「弁護士の活用法」の続きです)

 では,契約書について弁護士をうまく活用するには,どういったことを心がけておけば良いのでしょうか。
 まずは,基本的な前提から順番に確認をしていきます。

1,契約書に押印すると,法的な拘束力が生じる

 「当たり前じゃないか」「小学生じゃあるまいし・・・」と言われそうですが,この「法的拘束力が
生じる」覚悟無しに軽々しく押印してしまう経営者の方は少なからずおられます。

 どうしてこんな不利な契約書に押印をしたのか,と弁護士が聞くと
,返ってくる答えはだいたい以下の三つでしょうか。
A「相手があまりにしつこいので押印してやった。後でごねれば何
とかなると思った。」
B「分量が多いし,難しい言い回しばっかりだったのでよく読んで
いなかった。」
C「契約書に『契約で揉めたら,甲乙誠実に協議して解決する』と
いう条項が入っていたから,何とかなると思った。」

 さて,Aについてですが・・・
 商売をしていない一般消費者であれば,消費者契約法等の保護が受
けられます。ですので,不利な契約書に押印をしてしまったとしても,「その条項は消費者契約法に違反しているから無効だ」と反論して,法的拘束力を破ることも出来たりします。
 ですが,このコラムをお読みの事業者の皆さんには,こういった消
費者保護関連の法律が適用されません。ですので,(よほどエグい条項であれば別ですが)基本的に押印したら契約書の内容通りに拘束されてしまいます
 このように説明をすると,「でも,本当にしつこく押印を迫ってき
たんですよ!脅迫して押印させたから無効でしょ。」と仰る社長もおられるのですが,しつこく食い下がられたくらいでは契約が無効になったりはしません。それこそ,「押印させられた社長がとても高齢で,相手の事務所で複数人に囲まれて何時間も押印を迫られた」とか,余程のシチュエーションを立証できない限り,契約の効力を争うことは難しいのです。
 普通に考えても,軽くごねただけでひっくり返るようなら,契約書
の意味がありませんしね。

 Bも同じようなもので,「契約書をよく読んでいなかったので無効
だ」なんて言い分は,事業者の場合ほぼ通用しません。
 裁判官は,基本的に「商売をやっている人は,契約書をきちんと読
んで納得して押印している」と考えますので,余程特殊な事情が無い限りこういった反論は通らないのです。

 そういうわけで,経営者の方は,「押印=契約書に書いてあるとお
りになる」くらいの覚悟で契約書に臨んで頂きたいと思います。

 Cについても触れますと,確かに多くの契約書には「甲乙誠実に協
議して決する」という条項が,最後の方に入っていることが多いです。
 ですが,この「誠実協議条項」に,法的な意味はありません。
 この条項がなくても誠実に協議しあうことはできますし,逆にこの
条項があっても相手が協議に応じてくれなければそれまでです。

 以上のように,事業者が契約書に押印するということは,その契約
書に書いてある内容を丸呑みするということなのです。
 事業を営んでいると様々な契約書に押印する
場面が出てくるかと思いますが,以上のような「契約書の重み」は再確認して頂きたいと思います。

 もちろん,力関係で不利益な契約内容を飲まざるを得ない場面はあ
るでしょう。とはいえ,そういった場合でも内容はきちんとチェックした上で押印したいところです。
 同じ不利益な契約に拘束されるにしても,ちゃんと内容を理解した
上で契約するか,よく分からないまま契約するかは,その後のリスク管理の上で大きな差が出てきますので。