弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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債権回収7~何を差し押さえる? 不動産編~

2018年01月04日

 あけましておめでとうございます。
 今年も,中小企業に役立つ法律知識を発信していきたいと思いますので,よろしくお願い致します。

 さて,前回は,債権が焦げ付いたときに相手の動産を差し押さえるというお話をしました。ですが,動産は差し押さえてもあまりお金になりません。
 そこで,今回以降は(それぞれ一長一短ありますが)もっと回収効率の良い差押財産について解説します。高額の掛け取引を継続的に行う場合には,今回以降解説する財産を相手が持っていないか注意しておけば,有事の際に慌てずに済むでしょう。

 今回は,取引先名義の不動産を差し押さえる場合について説明します。
不動産を差し押さえるにあたっては,大きく分けて以下の2パターンの方法があります。

1,勝訴判決などを使って不動産を差し押さえる方法
 債権が焦げ付く前に対策を採っていないと,こちらの方法によらざるを得ません。
 代金を払ってくれない相手に裁判を起こして,「金???円を支払え」という判決を裁判所に出してもらいます。そして,その判決を使って,相手名義の不動産を競売にかけて,売れたお金から代金を払ってもらうという方法です。
 メリットは,対象不動産の発見が簡単なことです。会社所在地や営業拠点の不動産の登記をとれば,それが相手名義かどうかは簡単に分かります
 デメリットは,不動産に銀行の抵当権等がついていると,銀行の方が優先してしまうということです。支払いが焦げ付いている取引相手は,銀行等からも借金をしていて,自分の不動産に抵当権をつけているのが普通です。こういった不動産を競売にかけようとしても,裁判所から「銀行の抵当権が優先してあなたに配当されるお金は残らないでしょうから,もう競売は終わりです。」と言われて打ち切られてしまいます。正に「門前払い」というわけです
 まれに抵当権がついていない不動産があったりしますが,それはたいてい銀行が価値なしと判断した不動産ですので,競売にかけても買い手はつきません。買い手がつかないとお金は配当されませんので,これまた骨折り損ということになります。
 以上のように,支払いが焦げ付いてから相手方の不動産を差し押さえても,ほとんどの場合銀行の抵当権に負けて回収できません
(続きます)