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債権回収6~何を差し押さえる? 動産編~

2017年12月18日

 前回までは,掛け取引をしたときの証拠の残し方について解説してきました。
 今回からは,いざ相手の支払が滞ったときに,相手のどういった財産を差し押さえればいいのかについて,財産の種類ごとに説明をしていきたいと思います。
 また,当事務所が重視する「予防法務」という観点からは,正常な取引状態の時点で担保を取っておく方が有効ですので,そういった視点も盛り込んで説明していきます。

 今回は,「動産」(要するに「モノ」です)の差押について説明します。執行官と一緒に相手の自宅や事務所へ行って,その場にある動産を売り払ってお金に換え,債権を回収するというやり方です。

 結論から言うと,「動産」は債権回収の引き当てとしてはあまり機能しません。(ドラマとか漫画では,よく家財道具にペタペタと札を貼るシーンがありますが,実務ではあのようなことはありません)

 まず,個人所有の財産の多くは法律上差押が禁止されています。家具等の生活用品のほとんどは差押できないのです。ゴルフクラブのような例外もありますが,二束三文でほとんどお金になりません。
 相手が会社の場合はこういった差押禁止の制約はありませんが,それでもお金に換えやすい動産というのはほとんどないものです。レジの中に入っている現金が見つかればラッキーかな,という感じです。(現金も「動産」ですので,差押は可能です)

 このように,動産差押は,お金の回収には直接つながりにくいです。
 とはいえ,相手方に与える心理的ショックは大きいですから,後日相手方が「事務所に押しかけられるなんて二度とされたくない」と考えて素直に支払ってくることもあります。
 こういった任意の支払を期待して,牽制球代わりに動産差押をするのが現実的なところかと思われます。
 「明らかに羽振りがいいのに,巧妙に財産隠しをしていて差し押さえる財産が見つからない・・・」という場合は,ダメ元でやってみるのも一手でしょう。

 なお,以上でご説明した動産差押は,「支払が滞ってから,相手の動産を差し押さえる」というものでした。
 これとは別に,平常時のうちに動産を担保に入れさせ,優先的に回収できるようにするという方法もあります。「ある倉庫内の在庫商品全部」「ある牧場内の畜牛全部」「ある養殖場内の養殖魚全部」といったふうに,範囲を特定して担保を決めるのが一般的です。(「集合動産譲渡担保」といったりします)
 とはいえ,相手方が困窮するとこれらの在庫を全部売却してしまい,気がついたときにはすっからかんになっていることも多いです。(破産直前の会社は大抵こうなります)
 理屈上は優先的な回収権があるとはいえ,実際に叩き売られてしまうと手も足も出ないのが現実ですので,あまり過信して良いスキームではないかと思っています。

 動産については以上です。
 次回以降は,もう少し回収効率の高い差押財産についてご説明していきます。