今回は,「不動産の共有」について取り上げたいと思います。
共有不動産は,別に中小企業に限った問題ではありません。ですが,特に親族経営の中小企業で問題となりやすいテーマです。
「後継者以外にも子が何人かいる」「引退した父親名義の不動産を使って事業を営んでいる」といった事情がおありの経営者様は,ここでつまづかないよう,是非お読み頂ければと思います。
さて,共有不動産が発生する原因ですが・・・これはほぼ「相続」で決まりです。
きょうだいが何人かいる場合に,一番望ましい分け方は「長男が事業用不動産と会社株式,次男が預金??円,三男が投資信託全部・・・」といった感じで「各財産ごとに単独所有させる」方法です。これなら,単独所有した相続人が,その財産を100%自由に使えるので,後々揉めることはありません。
ですが,実際には「分け方で揉めるのは面倒くさい」といった理由から「不動産は全部きょうだい3等分,会社株式も3等分,預金も3等分・・・」といった感じで,何もかも「縦割り」にしてしまうことがあります。確かに,この分け方なら簡単に「平等」を達成できますので,遺産分割のときは楽ちんです。ですが,後々になって,特に不動産についてはしんどいことになります。
といいますのは・・・共有になっている不動産は,(法的にはともかく)実際には共有者全員が賛成しないと売り物になりません。どんなにいい不動産でも,共有持分の一部だけでは誰も見向きもしてくれませんので。
「いや,先祖から引き継いだ土地だし,よそへ売ることなんてない。だから共有で構わない」という方もおられるかも知れません。ですが,共有不動産は自分で使うにも厄介なものです。
仲の良いきょうだい同士なら「親父の事業を継いだ兄貴が無料で使っていいよ。固定資産税だけ払ってね」といった感じでスムーズに済むでしょう。
ですが,その後世代交代して,共有者の顔ぶれが「従兄同士」「又従兄弟同士」になったらどうでしょう?「配偶者相続人が再婚して,再婚相手やその連れ子に共有持分が渡ってしまう」というケースも案外多いです。
こんな感じで世代交代・相続が進んでいくと,共有者同士の関係が疎遠になっていくだけでなく,共有者の頭数もねずみ算式に増えてしまい,権利関係は一気に複雑化します。そして,一人でも厄介な親族が共有者になってしまうと「祖父のした約束なんて知らない。土地の使用料を払え。」といった感じでトラブルに発展してしまいます。
そして,この面倒な状態から更に目を背けて放置していると,あっという間に「共有者30人超の不動産」ができあがってしまいます。共有者のうちの数人は音信不通になっていたりして,こうなるともう修復は不可能です。仮に専門家の助力を得て共有持分の回収をしようとしても,「評価額50万円の土地のために100万円の専門家費用がかかる」といった状態になり,「もういいや・・・」となってしまいます。
「そんな大げさな」と思われるかも知れませんが,こういったケースは実に多いのです。
そういうわけですので,「共有不動産を作らない」「仮に共有不動産があったら,少しでも早く誰かの単独名義にする」ことを心がけたいところです。共有不動産ができてしまった場合,弁護士が「交渉」と「共有物分割手続」を組み合わせて対処することになるでしょう。
その辺の対策については,「共有不動産の処理」で詳しく解説します。