弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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中小企業の労務管理 ~では,雇ってしまったら?2~

2017年04月10日

(前回「中小企業の労務管理 ~では,雇ってしまったら?1~」の続きです。)
 さて,今回は,「どうしてもこの従業員には辞めてもらいたい」となった場合に,真っ先に検討するべき方策をご説明します。

 それは,「『解雇』ではなく『自主退職』をしてもらう」ことです。

 会社が従業員を一方的に解雇しまうと,後日「あの解雇は無効だ」と争われる可能性があります。
 他方で,従業員による自主退職であれば,(会社が無理矢理勧めたのでもない限り)有効・無効は問題になりません
 ですので,まずは従業員ときちんと話し合って,「解雇」ではなく「自主退職」という形での雇用契約解消を試みましょう。

 もっとも,従業員にとって自主退職は「失業保険の受給につき,3ヶ月間の待機期間が生じる」「解雇予告手当がもらえない」というデメリットがあります。(「自分から辞めた=クビになったわけではない」ということで,再就職活動が事実上しやすいというメリットもあるのですが・・・)

 そのため,従業員の経済状況によっては,「自主退職なんてしないぞ。お金の面で損してしまうじゃないか。」「当面の生活ができなくなる。」という抵抗に遭うこともあるでしょう。
 そういった場合は,以下の2つの方策が考えられます。

(1) 当面の生活を維持できる程度のお金(給料2~3ヶ月分程度?)を手当として給付しつつ,退職届を書いてもらう。
(2) 解雇という形を取る。ただし,「解雇に異議を唱えない」という条項を含んだ合意書をきちんと取り交わしておく。

 いずれも,従業員に経済面での配慮を行ったものです。((2)であれば,従業員は失業保険を即時に受給できます)

 とはいえ,以上のような配慮を行ってもなお,「あの退職届(or合意書)は,会社がしつこく退職を勧めてくるからイヤイヤ書いた。無効だ。」などと争われることがあります。
 こういった主張に備えて,退職を勧める回数・通知内容については,ある程度気をつける必要があります。
 例えば,あまりにしつこく退職を勧めたり,「自主退職しないのであれば,会社から解雇するぞ。解雇だと,再就職の時に色々不都合じゃないの?」と伝える等,事実上退職を強制したような事情があると,自主退職が無効とされる可能性があります。この点に留意しつつ,「退職を勧めた日時・回数」「通知内容」については記録を残し,後日自主退職の無効を主張されたときに反論できるよう気をつけましょう。

 また,自主退職するかどうかを決断してもらうのに,ある程度日数をおくというのも一案でしょう。(逆に,ある日いきなり退職を勧めて,同日の退職届を書かせるというのは,後日無効を主張されやすくなると思われます。)

 以上のように,まずは退職してもらいたい従業員ときちんと話し合いましょう。そして,
「退職届(or解雇合意書)を書いてもらう」
「従業員の当面の経済面に配慮する」
「退職届等を書いてもらうときは,ムリヤリ書かされたと言われないようにする」
 以上3点に気をつければ,後日トラブルに発展する恐れはグンと下がります。