弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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中小企業の労務管理 ~雇用しないのが最大の予防2~

2017年03月13日

 (前回「中小企業の労務管理 ~雇用しないのが最大の予防1~」の続きです。)

 実際には,面接時の印象が微妙な志願者について,「うーん,まあ鍛えれば何とかなるかな?」という感じであっさり採用する社長も多いかと思います。確かに,初対面の時に冴えなかった従業員が後で化けるというケースはあるのですが,それはあくまで例外です。
 特に,面接時の従業員は,採用してもらうために「一番いい自分」を見せているわけです。雇った後,その従業員が面接時よりも良くなることは期待するべきではありません。(この点,男女間の関係に似ているかも知れません。)

 また,最近は精神疾患を理由とした長期休職に陥る従業員も急増しています。
 もちろん,近時問題になっているように,会社が過大な業務を従業員に課したせいで精神疾患を患うケースも多いです。こういったことがないよう,経営者側は各従業員の経験・能力に応じた業務量の配点を行う必要があります。

 ただ,他方で,この問題は各従業員ごとに差があることも事実です。(精神的な打たれ強さは,人によって個人差が大きいものです。)そのため,精神疾患の既往歴についても,採用を判断する際に確認したいと思う経営者の方もおられるでしょう。
 もっとも,既往歴の回答を就職希望者に強制することはプライバシー権侵害の問題を生じ得ます。
 ですので,仮に既往歴を確認するのであれば,「回答するかどうかは任意です」「回答しなかったからといって,採用の判断の影響することはありません」と明記した回答票に,既往歴を回答してもらうようにしましょう。あくまで任意の回答にとどめれば,プライバシー権侵害の問題も一定程度緩和されます。
 とはいえ,業務と全く無関係な既往歴を聞くことはやはり問題となり得ますので,質問内容には専門家の意見を交えつつ細心の注意を払いたいところです。

 ここまで読むと,「精神疾患の既往歴がある人に,就職の機会を与えないということか」と反発を感じた方もおられるかも知れません。
 実際に,書いている谷田自身,このようなことを書くのはとても心苦しいのですが・・・中小企業の防衛ということを考えるとやむを得ないところです。

 従業員が数百人いる大企業や官公庁であれば,従業員数人が精神疾患で長期休職しても業務に生じる影響は比較的軽微です。
 ですが,数人~数十人で回している中小企業ですと,ごく数人が長期休職しただけで業務に致命的な影響が生じます。そのせいで,他の大多数の従業員が路頭に迷う,等ということは避けねばなりません。

 採用の時点で気をつけるべき点は他にも色々ありますが,ひとまず今回の解説を押さえて頂きたいと思います。
 ここまで読まれた経営者の方は,「地方の中小企業はそんなえり好みできない」「採用でそんな贅沢を言っていたら,人が全然集まらない」と思われたかも知れません。
 ですが,採用で失敗したときに中小企業が受けるダメージは甚大です。(どのくらいダメージが大きいかは,次回以降お話しします。)
 商売仲間の人脈や口コミなども生かしつつ,少しでも失敗しない採用を心がけたいところです。
(続きます)