弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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ちょっと脇道へ~会社の破産 その1~

2016年07月25日

 労務問題のコラムを連載している最中ですが,ここでちょっと別のテーマについてコラムを書きます。当事務所設立から1年,中小企業の皆さんからご相談を受けている中で「結構誤解されているなあ」と思ったことがあり,ここで触れさせて頂く次第です。(「ちょっと脇道」と言いながら,全3話構成になってしまいましたが・・・。)

 当事務所は,中小企業の支援を主な取扱業務にしています。
 そのため,企業の破綻を意味する「破産」はイメージが悪いということもあって,あえて独立した解説コーナーは設けていませんでした。

 ですが,弁護士として経営難に陥った中小企業のご相談を受けていると「どう見ても経営の再建は難しい・・・」というケースは多いのです。実際,当事務所の場合ですと,昨年7月に開業して以降今日までの間だけで3社の破産申立をお受けしています。

 既に仕入債務や従業員の賃金,税金等をたくさん滞納した状態でようやく相談に来られる会社も多く,私的整理は無理,かといって民事再生も費用面の問題もあって使えない(民事再生は,裁判所への予納金や弁護士費用の関係で,最低800万円の現預金が必要になります)・・・となると,破産手続しかないということになります。
 こういった実態をふまえた上で,「破産=失敗ではない」ということを知って頂きたく,今回の記事を書こうと思い立ちました。

 とは言ったものの,社長の皆さんには「破産なんて,会社を潰すだけのことでしょ?何もいいことないし,説明してもらっても意味ないよ」と言われてしまいそうです。
 ですが,破産手続も,うまく工夫すれば関係者への迷惑を最小限に抑えることができます。また,連帯保証人になっているであろう社長さん個人の生活再建にとっても,破産手続をきっちり理解しておくことは大事です。
 特に,破産手続は不吉な響きも相まって誤解されている点も多いように思えます。誤解に基づいて破産を避けて,かえって損をしてしまってはもったいないですので,これを機会に
正確な知識を得て頂くことは有益かと思います。
 
 それでは,「会社の破産」「社長さん個人の破産」がなぜ大事なのかを説明します。

1,会社にとっての破産
 企業の経営は,「対外的な取引」「対内的な雇用」が継続することで成り立っています。
 そして,廃業はこれら両方がストップすることを意味します。これまでお世話になっていた取引先との取引は停止し,従業員を解雇するはめになるわけです。
 ですが,破産必至の会社でも,体力に余裕のある同業者や取引先にお願いをして,事業を引き継いでもらう方法は残されています。事前に弁護士や裁判所と協議をした上で引き継ぎ先を確保して,引き継ぎ条件に問題がないか裏付けを取った上で事業を引き継いでもらい,会社の破産を申請するわけです。(事前の弁護士・裁判所との協議は必須です。これをしないと,後で事業譲渡が取り消されることもありますので)

 このように,破産手続と絡めて事業譲渡をすることで,これまで続いていた自社の取引や従業員の雇用を一部でも守れるわけです。また,事業の承継先からいくらかでも事業譲渡代金を払ってもらえれば,その代金は破産手続を通じて債権者へ配当されますから,債権者への迷惑を減らすことにもなるのです。

 もちろん,平常時のM&Aと違って,破綻寸前の状態で急いで事業譲渡の話をまとめるわけですから,多大な混乱や想定外の事態も生じます。(正直,弁護士にとっても,破産直前の会社の事業譲渡はスケジュール面・精神面どちらについてもキツいので,余裕のある段階で相談に来て欲しいのが本音です。)
 ですが,何もせずに最初から諦めていては,会社がバラバラに分解されるのを待つだけになってしまいますので,弁護士に相談をしてできるだけのチャレンジをして頂きたいところです。

(続きます)

※後日追記
自己破産の常設コーナーを設けました。自己破産手続について更に詳しく知りたい方はこちら。
http://www.tanida-lawyer.jp/bankruptcy.php