弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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中小企業の労務管理 ~よくある問題点1~

2016年06月27日

 前回は,「司法アクセスの向上」「労使関係が希薄になってきたこと」等の理由で,中小企業が労使紛争に巻き込まれるおそれが急増しているというお話をしました。
 もはや,労使紛争はいわゆる「ブラック企業」だけの問題ではなく,一般の(そして脇の甘い)中小企業がいつ巻き込まれてもおかしくないテーマです。

 他方で,中小企業の労務管理体制はまだまだ十分とは言えません。特に,中小企業が陥りがちな労務管理上のミス・問題点について,ざっと列挙していきたいと思います。そして,その後対応策や改善方法についても触れていきますね。

1,雇用契約書を作っていない
 最近はさすがに減ってきましたが,それでも結構見かけます。
 雇用契約においては,ちゃんと決めておかないとトラブルになる要素がたくさんあります(雇用期間,就業時間,賃金額etc...)。
 そして,それらの条件は書面で明示しないといけないとされており(労働基準法15条等),他の契約類型よりも契約書作成の必要性は強いといえます。

 単純な金額の点からいっても,雇用契約書をちゃんと作った方がいいといえます。例えば,月給20万円の人を10年間雇用すると,
20万円×12か月×10年=2400万円
となるわけです。(社会保険料等の使用者負担分を考えると,更に高額になります)
 2400万円の契約を口約束で済ませてしまうなんて,考えてみたら恐ろしい話ですよね。ましてや,雇用契約は単発の売買契約等と違って,生きた人間との長期間にわたる契約なわけですから,条件面を巡って行き違いが生じないように書面化することは必須といえるでしょう。

 雇用契約書を作っていないことで生じるトラブルとしては,

・期限付き(3ケ月とか6ケ月)で口約束をしていたところ,従業員が期間の定めのない雇用契約だと主張してきた。その結果,雇用契約を継続するはめになった。

・給料20万円のうち4万円は残業代手当という約束だったのに,従業員がそんな約束をした覚えはないと言ってきた。その結果,4万円を残業代から差し引けないどころか,基本給20万円で残業代を計算することになり,莫大な金額の残業代を請求されることになった。(いわゆる「割増賃金の固定払い」の適否については,また掘り下げて解説します。)

などがあります。どちらも契約書等で明確にしておけばある程度は防止できるトラブルです。

(続きます)